特定商取引法って何?
皆さんは特定商取引法についてご存知でしょうか。
例えば、訪問販売や電話での勧誘販売、マルチ商法などと言われる連鎖販売取引などの、よく消費者がトラブルに巻き込まれやすい取引に対して、消費者を守るためのルールを定めたものが特定商取引法です。
どんなルールで消費者を守るかというと、一般的な取引よりも厳しく名前や目的などを消費者に伝えることを義務付けたり、広告の内容の規制や不当な勧誘の禁止、契約時に書面による重要事項を交付することを義務付けることで無理やり勧誘されることを防いだり、クーリング・オフという契約後でも一定期間内なら消費者側が一方的にキャンセルすることができるというルールを定め、これにより無理やり勧誘されてもキャンセルができるという消費者保護を設けることができています。
もっと詳しくお知りになられたい方は、消費者庁の特定商取引法ガイドをご覧いただけたらと思います。
ピアノ教室も特定商取引に該当するの?
さて、ピアノ教室や音楽教室も特定商取引に該当するなんて聞いたことがない、という先生も多いとは思います。それもそのはず、基本的にはピアノ教室や音楽教室は特定商取引には該当しません。ただし、基本的には、です。
学習塾や語学塾ですと「特定継続的役務提供」と呼ばれるサービスに該当し、このサービスは特定商取引に該当するのですが、ピアノ教室や音楽教室は該当しません。塾は該当して音楽教室は該当しない理由とは「学力の教授に該当」していないからというのが理由で、特定商取引法にも「ピアノ・絵画・そろばん・習字などの技芸は学力の教授に該当しない」と書かれています。
つまり、学習塾や語学塾は「学力」を教える場所であり、学力の教授に該当すると特定継続的役務になるという解釈で、音楽教室やピアノ教室は「技芸」を教える場所なので該当しない、という解釈になっています。
さて、ここで一つ問題になってくることがあります。それは何かと言いますと、一般的なピアノ教室や音楽教室は楽器の演奏方法、つまり技芸を教える場所ですが、例えば楽器を演奏する目的が音大受験だった場合、大学進学のために習っているのだから「学力の教授」になるのでは?
私も疑問に思ったので、弁護士の方に相談してみたところ「入学試験に備えるためや学校教育の補習として提供されている場合等は、技術指導も含めて特定継続的役務に該当し得る」という回答をいただきました。
つまり・・・
音大受験コースなどの進学を目的としたコースについては特定商取引に該当するため、特定商取引法に基づいて宣伝活動や契約を行わなくてはならないのです。
知らなかったでは済まない特定商取引法への対処
さて、特定商取引法に該当するコースをお持ちの教室の場合、何をしなくてはいけないかといいますと、私も専門家ではないので分かる範囲で主要なところだけ解説しますと以下のことが該当します。
- ホームページに「特定商取引法に基づく表記」が必要
- 申込時に重要事項を書いた書面の交付
- クーリング・オフの適用
詳しくは消費者庁のページをご確認ください。
もっと詳しく知りたい方は、弁護士などの専門家にご相談される必要があるのですが、全く分からずにホームページへ音大受験対策コースを作り、特定商取引法に基づく表記などをおこなわずにいる教室も非常に多いと思います。
また、ちょっと怖いのが「誇大広告の禁止」という部分です。よく「ピアノを習うと頭が良くなる!」といったキャッチコピーを載せたホームページを見るのですが、特定商取引に該当しているコースを設けていると、誇大広告とみなされる危険性もあると思います。
それともう一つが、こういったことを熟知しているクレーマーの存在です。頭のいいクレーマーは特定商取引法に違反していることに目をつけて纏わりついてくる危険性もあります。
もし、音大受験などの進学目的コースをホームページに記載しているのでしたら、是非、ご注意ください。
※本記事は弁護士からのアドバイスのもと作成しておりますが、詳しい内容については消費者問題に詳しい専門家や弁護士にご確認ください。