音楽教室のオンラインレッスンは簡単に導入できる時代・・・ですが
皆さん、ご機嫌いかがでしょうか?一般社団法人全国個人音楽教室生徒募集支援協会、理事長の大沢です。
会員の先生たちより「オンラインレッスンは導入したほうがいいんでしょうか?」というご質問を複数いただき、確かに昨今、オンラインレッスンを導入する音楽教室が、徐々にではありますが増えてきています。
ご質問に対する回答を書こうと思い、協会で配信しているセミナーレター第38号で「成功する音楽教室のオンラインレッスン」について執筆していたら、折しもコロナウイルス感染防止による音楽教室閉鎖。これに対抗するためにオンラインレッスンを積極的に導入する動きが更に加速化してきたようです。
数年前まではオンラインレッスンという言葉はあっても、実際に導入するには価格的にも難易度的にも敷居が高く、導入しても生徒さんがその仕組について来られるのか?本当にオンラインで上達するのか?そもそもレッスン可能なのか?という様々な問題点がありました。しかし、今はシニアの方でもLINEを使って孫とビデオチャットを気軽に楽しむ時代になり、ビデオチャットをオンラインレッスンに活用することで、敷居を低く、コストも殆どかからずにオンラインレッスンを導入できる時代になりました。
こうなると、お客様側にしてみるとLINEやSkypeなどのアプリでビデオチャットするのは当たり前ですし、先生側としてもSkypeを使えばオンラインレッスンを簡単に導入できる。英会話教室なんかはビデオチャットでのレッスンがいち早く盛んに導入されてますし、いよいよ音楽教室もオンラインレッスンの時代か・・・!?と、思いたくなるのですが・・・
果たして、簡単に上手くいくでしょうか?
オンラインレッスンが音楽教室にもたらすデメリット
現状でオンラインレッスンを導入している音楽教室ですが、まだまだ試験段階。特に自宅個人の音楽教室でのオンラインレッスンは、お互いのネット環境によっては回線速度が安定せず、配信が跡切れ跡切れになってしまう危険性があります。(それも5G回線の導入でどんどん解消されていくと思いますが)
そして何より、「楽器」という「人」以外の「繊細な道具」を習うのに「オンラインで本当に上達するのか?」。そしてオンラインで「生徒との人間関係を築けるのか?」という部分については、先生自身がオンラインの世界での指導力や人間力を、相当上げる必要が出てきます。それができなければ、オンラインを導入しても生徒さんの「演奏レベルの低下」「人間関係の希薄さ」を招き、導入当初は物珍しさで入会する生徒さんもいるかも知れませんが、続ける事ができず退会が増える。もっと恐ろしいのが、オンラインレッスンに力を入れすぎて、リアルに教室に来てくれている生徒さんへのフォローが薄くなり、次第に生徒が減っていくという事も考えられます。
確かにオンラインレッスンは先生、生徒両方にとって便利ではあります。しかし、「便利」と「レッスンの楽しさ」は全く別問題です。
私はオンラインレッスンを否定しているわけではありません。むしろオンラインレッスンはおこなうべきですし、オンラインレッスンを積極的に学び導入していく教室と、最初から何もしない教室とでは、明らかな差が生まれることは間違いありません。
ただ、オンラインレッスンを導入するのであれば、便利さだけではなく、レッスンをする楽しさに直結する「レッスンの気持ちよさ」もオンラインで表現する必要があります。
オンラインレッスンをやるために必要不可欠なもの
なぜ、お客様はレッスンに通ってくれるのでしょう?これは音楽教室を経営していく上で、一番大切で全ての音楽教室の基礎となる部分です。
答えは「気持ちいい」からです。
家で独りで楽器を練習するだけでは満足できない部分があるからこそ、教室に通ってくれます。満足できない・・・ということは「気持ちよくない」ということです。
教室に通えば、できない部分を分かりやすく熱心に間近で指導してくれますし、弾けるになれば先生に褒められます。
そして、一番の気持ちよさは「ライブ感」と「コミュニケーション」です。
コンサートや発表会で演奏する気持ちよさも「ライブ感」ですが、自分の家ではなく、他の場所に行って演奏することもライブ感です。ピアノ教室であれば、先生の自宅のグランドピアノで気持ちよく演奏することもライブ感です。
そして、これからの時代、オンラインでのコニュニケーションもそうですが、AIやロボットが社会に溢れ出てくると、リアルな人との触れ合いが逆に少なくなっていきます。AIやロボットが接客する無人のスーパーやコンビニ、レストラン。コロナウイルスの影響でテレワークが導入され、これからも自宅にいながら遠隔で仕事ができ、職場に行く必要がない人が増えれば、職場での会話も少なくなり、効率化が重視されます。
そうなると、どんどんリアルな人との触れ合いができる場所が減っていき、そうなっていくと、これからの時代、逆に人々はリアルな人との触れ合いを望んでいきます。
オンラインレッスンは便利ですが、テレワーク同様、遠隔での作業であり、自分の部屋で独りでいること、無人であることに変わりはありません。画面上ではなく、リアルなコミュニケーションと、非日常な場所で演奏する気持ちよさが、オンラインレッスン導入と共に、更に必要になっていきます。
オンライレッスンは必要不可欠な時代です。しかし、オンラインレッスンとリアルのレッスンは並行して存在し、その価値は異なっている部分があるということを念頭に置いて導入する必要があります。